世界最大の3次元非定型建築物「DDP」
建築家のザハ・ハディドが設計した3次元非定型建築物のDDPは、まるで韓国の風景のようです。
互いに争わずに水が流れるようにつながった形状、こことむこうが別に分かれておらず、屋根が壁となり壁が屋根にとなる形状です。
DDPは、オープンスペースがやりとりしてつながり、動線に沿って行き来し共生する「換喩の風景」を含んでいます。
建設概要
位置 | チュン(中)区ウルチロ281 DDP(20筆地、トンデムン(東大門)運動場跡地) |
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規模 | 延べ面積86,574㎡(地下3階、地上4階、最高高さ29m) |
事業期間 |
2009.04.28 ~ 2014.03.21
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空間現況 |
5施設、15空間
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設計 | ザハ・ハディッド・アーキテクツ+サム総合建築事務所 |
施工 | ㈱サムスン物産 |
運営機関 | ソウルデザイン財団 |
有機的なデザインで世界から注目されたザハ・ハディド氏は、建築と都市、そしてデザインの枠にこだわらず、常に新たなことに挑戦する革新的な建築家として知られ、2004年に女性として初めてプリツカー賞(Prizker Architecture Prize)を受賞した。主な作品は、ドイツのファエノ科学センターやヴィトラ消防ステーション、インスブルック・ベルクイーゼルのスキージャンプ台、米シンシナティのローゼンタール現代美術センターなどだ。 また、ロンドンの建築財団や2012年ロンドン五輪の海洋館、アブダビのシェイク・ザイード大橋、グッゲンハイム美術館、ドバイのビジネスベイタワー、モンペリエのピエール・ヴィーヴ・ビルなど多数のプロジェクトを手掛けた。
世界的な建築家ザハ・ハディド(Zaha Hadid)氏の非定型設計を実際の建築物に具現化することは、従来の2D図面設計方式では施工・検討が不可能だった。 しかし、ソウル市、ソウル・デザイン財団、サムスン物産は、韓国の建築技術を駆使し、3次元立体設計方式「BIM(building Information Modeling)」により全体の工事を完成させた。 最近は、一般の建築物にも事前検討のためにBIM技法を適用するのが一般的だが、建築物の外壁といった一部分にのみ適用されることがほとんどだった。そんな中、DDPは、土堀りの基礎工事の段階から建築構造、建築インテリアの仕上げ、MEP(mechanical electrical plumbing、機械電気配管)、調整までの全工程においてBIMを適用した事実上初めての事例だといえる。 BIMにより、それぞれ異なる外装パネルを制作する過程で一寸の誤差もなく自動製造することが可能となり、設置・施工においても修正の必要なく一度に付着することができた。
自由で波のような曲線とともに、柱の見えない室内を実現するために、メガ・トラスとスペース・フレーム(Space frame)が適用された。スペース・フレームによる長スパンと曲面の実現と、キャンティレバー構造のスペース・フレーム を支えるために、一般の建築物ではなく橋梁といった大規模な構造物に用いられるメガ・トラスを使用した。こうした技術的基盤により、DDPの内部を柱のない大型空間にすることができた。
一つ一つ同じもののない4万5,133枚のアルミニウムパネル。DDPと一般建築物の最大の違いは、外観のほとんどを占める世界最大規模の非定型外装パネルだ。
トンデムンデザインプラザの外観の多くを占める外装パネルは、4万5,133枚の規格、曲率、大きさがすべて異なり、従来の生産方式と施工方法ではデザインの実現、品質確保、工期遵守が不可能で、韓国内外にベンチマーキングできる事例が皆無だった。外装パネル工事を定められたコストと工期の範囲内で実現するために、サムスン物産は船舶や航空機、自動車などすべての金属成型分野の技術を総網羅し、世界で初めて2次曲面成型・切断装備を製作した。
トンデムンデザインプラザは、ユニークな雰囲気を演出するために建物の内外に様々な模様の非定型露出コンクリートを採用した。露出コンクリートは、外観から飛び出したコンクリートの表面に特別な仕上げを施さずにコンクリートの構造体をそのまま露出させるため、外観工事とコンクリート埋設の際に精密な作業と品質管理が要求される。しかも、トンデムンデザインプラザの露出コンクリートは、自由曲線で構成された非定型のため高難度の作業だった。
3次元非定型露出コンクリートを実現するためにサムスン物産はBIMを活用、非定型構造体の断面を300ミリ間隔で抽出し、外観を構成するRib合板工法を適用した。そして、内部の非定型の柱の工事には、外装パネル成型装備を使用し、ステンレス・スチール(Stainless Steel)とアルミニウムを同時に適用してすっきりとした非定型露出コンクリートを実現した。
トンデムンデザインプラザの内部の仕上げも、外装パネルと同様にすべての面がそれぞれ異なる曲率と形態で設計された3次元非定型形態で、曲面を実現し、耐火性に優れた環境的な仕上材である天然石膏ボードやG.R.Gボード(Glassfiber Reinforced Gypsum Board)、コットン吸音材、人工大理石などで施工した。
さらに、同じ模様がない3次元非定型形態に内部を仕上げる工事も、一般的な設計技法では実現し難く、外装パネルの施工と同様に最先端設計技法であるBIMが導入されたが、当工事の施工に先立って非定型に内部を仕上げる実物大のジオラマ(Visual Mock-up)を数回にわたって制作することで、施工性と品質を向上させる方法を模索し、その結果、ハイレベルの施工品質を確保することができた。